産業用ロボットや自動化装置の性能を最大限に発揮させるために、機械設備の据付精度は極めて重要です。わずかな傾きや隙間がその後の稼働や耐久性に大きく影響することがあります。この精密な調整を実現するために不可欠な部品が「テーパーライナー」です。
本記事では、テーパーライナーの基本構造やシムとの違い、据付精度を向上させるための選定・設計ポイントを解説します。さらに、規格外の製作や短納期対応、そして徹底した品質管理体制で、お客様の課題を解決する当社ならではのテーパーライナーについても詳しくご紹介いたします。
テーパーライナーとは?
テーパーライナーの基本的な役割と原理
テーパーライナーとは、斜めの勾配がついた板材を2枚1組で使用する部品です。機械設備の据付時に基礎と機械本体の間に設置し、水平調整や角度調整を行うために使われます。その名前が示す通り、一定の角度(テーパー)を持った形状が特徴で、この傾斜を利用して精密な位置調整を実現します。
基本構造は非常にシンプルですが、テーパーライナーを水平方向にスライドさせることで、垂直方向の高さを連続的に調整できます。このクサビの原理により、従来の固定厚みのライナーでは不可能だった、微細調整が可能になります。
シムや平ライナーとの違いとは?
機械据付に使用される調整部品には、テーパーライナー以外にも「シム」や「平ライナー」があります。それぞれの特徴と使い分けを理解することで、より効果的な据付精度向上が実現できます。
シムは、一定の厚みを持つ平板状の部品で、主に隙間調整や高さ調整に使用されます。厚みが固定されているため、調整幅に限界があり、複数枚を組み合わせて使用する場合も多くあります。しかし、積層による誤差の蓄積や、作業効率の低下といった課題があります。
平ライナーは、機械の基礎部分に設置される平板状の部品で、主に荷重分散や振動減衰を目的として使用されます。調整機能は限定的で、主に安定した支持基盤を提供する役割を担います。
これに対してテーパーライナーは、クサビの原理を活用した連続的な調整機能を持ち、一つの部品で幅広い調整範囲をカバーできます。調整精度が高く、作業効率も向上するため、高精度が求められる産業用ロボットや自動化装置の据付には特に有効です。
なぜテーパーライナーが必要?
現代の製造業において、機械設備の据付精度に対する要求は年々厳しくなっています。特に産業用ロボットや自動化装置では、わずかな据付誤差が製品品質に直接影響するため、μm単位での精密調整が求められます。
従来のシムを用いた調整方法では、限られた厚みの組み合わせでしか調整できないため、目標精度に到達するまでに何度も試行錯誤を繰り返す必要がありました。この作業は時間がかかるだけでなく、完璧な調整が困難な場合も少なくありませんでした。
テーパーライナーを使用することで、これらの課題を根本的に解決できます。

クサビの原理により、一つの部品で連続的な調整が可能になり、目標とする精度に短時間で到達できます。また、調整後の安定性も高く、長期間にわたって精度を維持できるため、機械の性能向上と寿命延長に寄与します。
さらに、テーパーライナーは振動吸収効果も持っており、機械運転時の微振動を抑制し、より安定した稼働を実現します。これにより、製品品質の向上だけでなく、機械の保守頻度削減や稼働率向上といった運用面でのメリットも得られます。
機械の据付精度を向上させる、テーパーライナー選定・設計の3つのポイント
ポイント1:使用環境に応じた材質の選定(鉄、ステンレス、真鍮など)
テーパーライナーの性能と耐久性は、選択する材質によって大きく左右されます。据え付ける環境の条件を正確に把握し、最適な材質を選定することが重要です。
鉄(SS400など)
最も一般的に使用される材質で、コストパフォーマンスに優れています。一般的な工場環境での使用に適しており、十分な強度と加工性を持っています。ただし、湿度の高い環境や化学物質に曝される環境では、錆や腐食のリスクがあるため、防錆対策が必要になります。
ステンレス
耐食性に非常に優れた材質で、食品工場、化学プラント、クリーンルーム、屋外設置など、清潔性や耐食性が強く要求される環境に最適です。鉄と比較してコストは高くなりますが、錆による劣化を防ぎ、長期間のメンテナンスフリーを実現するため、トータルコストでは有利になる場合が多くあります。
真鍮(しんちゅう):
非磁性や耐食性が求められる環境で選ばれます。また、鉄やステンレスと接触しても電食(異種金属接触腐食)を起こしにくいという特性があるため、特にデリケートな機器の据え付けや、特定の金属が使えない環境で活用されます。
上記以外にも、高温環境では耐熱鋼、高強度が必要な場合は合金鋼など、お客様の特殊な使用環境に応じた材質選択が可能です。
ポイント2:必要な調整量を満たす寸法とテーパー角度の決定
テーパーライナーの調整性能は、寸法とテーパー角度の組み合わせによって決定されます。
寸法設計では、設置スペース、支持荷重、調整量を考慮して決定します。長さが長いほど調整範囲は広がりますが、設置スペースの制約があります。厚みは支持荷重と強度要件から決定し、幅は荷重の分散と安定性を考慮して設計します。
テーパー角度は、調整精度と調整範囲のバランスを決める要素です。角度が小さいほど微細な調整が可能になりますが、調整範囲は限定されます。逆に角度が大きいと調整範囲は広がりますが、微調整が困難になります。一般的には1度から10度程度の範囲で選択されることが多く、用途に応じて最適な角度を決定します。
これらの要素を総合的に検討し、現場の条件に最適化された仕様を決定します。
ポイント3:規格品では対応できない「特殊な寸法・角度」という課題
産業用ロボットや自動化装置の多様化に伴い、据付条件も複雑化しています。標準的な規格品では対応できない特殊な寸法や角度が必要となるケースが増加しており、これが設計・調達担当者の大きな課題となっています。
このような場合、設計変更による対応や、複数の部品を組み合わせた複雑な構成を余儀なくされ、コストアップや信頼性の低下を招くリスクがあります。
これらの課題を根本的に解決するためには、特注製作が可能な製造パートナーとの連携が不可欠です。
当社が提供する特注テーパーライナー製作とは

自社工場だからできる、図面指示通りの特注対応
当社では、自社工場での一貫生産体制により、お客様の図面指示に忠実な特注のテーパーライナーの製作を実現しています。規格品では対応できない特殊仕様も、設計意図を正確に理解し、高精度な製品として形にします。
自社工場の強みは、設計から製造まで一元管理できることです。お客様の要求仕様を設計段階で詳細に検討し、製造工程での技術的課題も事前に解決します。また、製造中の仕様変更や調整にも柔軟に対応でき、お客様の開発スケジュールに合わせた迅速な対応が可能です。
規格品にない大型・小型サイズ、特殊な角度も1個から製作
当社では、大型機械用の特大サイズから、精密機器用の極小サイズまで、幅広いサイズ範囲に対応し、特殊角度についても、標準的な角度では実現できない微細調整や、設置条件に合わせた特殊な勾配設定にも対応しています。
特に注目すべきは、1個からの小ロット製作に対応していることです。試作開発や特殊用途では、大量生産を前提としない柔軟な製作体制が求められますが、多くのメーカーでは最小ロット数の制約により対応が困難です。当社では、お客様のニーズに応じて1個からでも丁寧に製作し、開発段階から量産まで一貫してサポートします。
お急ぎの場合も安心!在庫品の即日発送と特注品の短納期対応
いわいの強みのひとつは「納期の早さ」です。設備据付工事や保守作業では、予期せぬトラブルや設計変更により、テーパーライナーを緊急調達する必要が生じることがあります。私たちは、よく使用される規格品については在庫を常備し、即日発送対応を実現しています。
また、特注サイズも自社加工で製作しているため、短納期で提供することができます。お客様からの図面受領後、最短で設計検討を行い、製造工程を最適化することで、通常では数週間かかる特注品も大幅な納期短縮を実現します。
緊急性の高い案件では、24時間体制での製作も行います。お客様の工期遅延リスクを最小限に抑え、スムーズなプロジェクト進行をサポートします。
徹底した品質管理体制
μm単位の精度が要求されるテーパーライナーにおいて、品質管理は極めて重要です。当社では、材料入荷から最終検査まで、全工程で厳格な品質管理を実施しています。
加工工程では、各段階での寸法検査と表面品質の確認を実施し、不良品の発生を未然に防ぎます。最終検査では、3次元測定機を使用した高精度寸法測定と、実際の使用条件を模擬した機能検査を行います。
ネジやフランジなど周辺部品も一括調達
テーパーライナーの設置には、固定用のボルトやナット、座金、さらには設置台座など、多くの周辺部品が必要です。これらを別々に調達する場合、複数の供給業者との調整が必要になり、設計・購買担当者の負担が大きくなります。
当社はネジやボルトなどの産業資材の提案販売を行っており、テーパーライナー本体だけでなく、設置に必要な全ての周辺部品を一括して供給できる体制を整えています。お客様の設置条件に合わせて最適な部品を選定し、セット品として供給することで、調達業務の効率化を実現します。
「どこに頼めばいいかわからない」に応える課題解決力
特殊仕様のテーパーライナーが必要になった際、「どこに頼めばいいかわからない」という状況に直面することがあります。規格品メーカーでは対応できず、町工場では技術力や品質保証に不安があるといった課題です。
株式会社いわいでは、豊富な技術経験と幅広い製造能力により、このような課題を総合的に解決します。お客様の課題を詳しくヒアリングし、技術的な解決方案を提案から、実際の製作、品質保証まで一貫して対応いたします。
テーパーライナーの製作・調達なら、いわいまで!
産業用ロボットや自動化装置の高精度化が進む中、機械据付精度の重要性はますます高まっています。テーパーライナーは、この精度要求を満たすための重要な部品として、その役割も多様化・高度化しています。
株式会社いわいでは、豊富な技術経験と柔軟な製造体制により、お客様の多様なニーズにお応えします。規格品では対応できない特殊仕様から、緊急案件まで、どのような課題もお気軽にご相談ください。